パッティングストロークにお悩みの方必見。
同じように打っているはずなのに、距離感や方向性が違うと感じたことはありませんか?実は、その答えはパターの「重心位置」に隠されているかもしれません。
プロゴルファーたちはパター選びの際、最適な重心バランスを重視します。適切な重心設計のパターを用いることで、平均して3打スコアを縮められる可能性も指摘されています。
この記事では、重心距離・重心深度・重心高さといった基本から、2025年の最新重心設計技術まで徹底解説します。初心者にもわかりやすく、パター選びのポイントも紹介します。
目次
パターの重心とは?基本概念と重要性
ゴルフクラブのヘッドには必ず「重心」が存在し、パターも例外ではありません。多くのアマチュアゴルファーはヘッド形状や見た目に目が行きがちですが、ヘッド重量の中心点である重心位置は、打感やボール挙動に大きく影響します。適切な重心バランスを持つパターを選ぶことで安定した転がりが得られ、パットの距離感や方向性を改善できます。
重心の重要性はプロ選手の間でも広く認識されており、何十種類ものパターを試打して最適な重心を探し出す例も少なくありません。パターの重心を意識して選ぶことで、より一貫したパッティングが可能となり、結果的にスコアアップにつながるのです。
重心とは何か?
重心とは、物体の質量が集中している仮想的な一点のことで、パターヘッドの場合はヘッド全体の重さの中心点を指します。この位置は、ヘッドを吊るしたり回転させたりしたときにバランスが取れるポイントであり、ゴルフクラブでは非常に重要な数値です。クラブの重心位置が変わると、同じ力で打ってもボールの動きは大きく変化します。
パターにおける重心の役割
パターでは特に、重心位置がボールの転がりに直結します。重心が浅い(フェース寄り)パターはインパクトですぐにボールに回転が伝わり、素早く転がり出す特徴があります。一方、重心が深い(ヘッド後方寄り)パターはインパクト時の打球がわずかに浮き上がってから転がり始める傾向があり、転がり出しにやや時間差があります。
- 浅い重心のパター:ボールはインパクト直後から強く順回転し、パワーがすぐ伝わるため距離感が出やすい。
- 深い重心のパター:ボールは最初にわずかに浮いてから転がり出し、ミスショット時の寛容性が高く、転がりが安定しやすい。
これらの違いにより、同じストロークでも重心位置が異なるパターでは距離感や方向性が変わります。重心位置の違いでパットの距離感が最大20%も変わると指摘するクラブフィッターもおり、自分のストロークに合った重心設計のパターを選ぶことが一貫性向上の重要ポイントです。
パター重心の3要素:重心距離・重心深度・重心高さ

パターの重心位置は、主に【重心距離】【重心深度】【重心高さ】という三つの指標で表されます。これらの数値を理解すると、パターの挙動をより深く把握でき、選択の参考になります。以下でそれぞれの意味を解説します。
重心距離とは?
「重心距離」とは、パターヘッドの重心とシャフト軸線との水平距離を指します。この距離が短いとパターは**フェースバランス型**になり、フェースが自然に水平を保ちやすくなります。逆に重心距離が長いとパターは**トウハング型**となり、フェースのトウ側が下を向きやすくなります。重心距離はパターの適性ストロークを決定づける要素で、ストレートストローク向きかアークストローク向きかを判断する基準の一つです。
テスト方法としては、パターを水平に持ちシャフトを離してみると、フェースがどちらを向くかで確認できます。フェースが天井側を向けば重心距離が短いフェースバランス型、つま先側が下がれば重心距離が長いトウハング型です。
重心深度とは?
「重心深度」とは、パターヘッドのフェース面から重心までの横方向(奥行き方向)の距離です。重心深度が浅いパターは重心がフェースに近く、インパクト後すぐに回転が掛かるため順回転への移行が早くなります。逆に深い重心(重心深度が大きい)パターは重心がフェースから離れているため、ボールが若干浮き上がってから転がり出す特性があります。
浅重心パターはシャープで直接的な打感で、グリーンが速い時や上級者の距離感作りに好まれる傾向があります。一方、深重心パターは打感がマイルドで、ミスショット時の寛容性が高いため初心者やタッチに自信がない人、遅めのグリーンに対して有利です。
重心高さとは?
「重心高さ」とは、ソール(クラブの底面)から重心までの垂直距離です。低重心のパターは重心がソールに近いため、打点が重心よりわずかに上に位置しやすくなります。これによりボールはインパクト直後に早く順回転し始める傾向があります。逆に高重心のパターは重心が高いため、エネルギー伝達が安定しやすく打感がしっとりしますが、打点が重心より下がるとバックスピンが増してボールが跳ねやすくなる側面もあります。
- 低重心のパター:打点が重心より上になりやすく、順回転に入りやすい。そのため、ボールの転がり出しが速く、打感は弾き感のある軽快な印象になります。
- 高重心のパター:打点が重心に近いためエネルギー伝達が安定し、押し込んだようなしっとりしたフィーリングが得られる。ただし、打点が下がると順回転が遅れ、跳ねにつながることがある。
重心高さは、特に打点位置のばらつきに対する安定性にも影響します。重心位置とボールの上下位置関係を整えることで、順回転の入り方を最適化できます。
パター重心が与える打感・転がり・方向性への影響

パターの重心位置は、インパクト時の打感やボールの転がり、方向性に大きな違いを生み出します。前後(浅重心/深重心)、上下(低重心/高重心)、左右(慣性モーメント)の各方向での重心分布が異なると、パットの挙動も変わります。以下の表に、浅い重心と深い重心を比較してまとめました。
| 項目 | 浅い重心(フェース寄り) | 深い重心(背面寄り) |
|---|---|---|
| 打感/打音 | 高音域でシャープな音。打感は「カチッ」と手に伝わりやすい。 | 低めの音でマイルド。押し込むようなしっとりした感触。 |
| 転がり | 初速が速く順回転への移行も速いが、ミスに敏感で距離にばらつきが出やすい。 | 初速は穏やかで、順回転が定着するまでにやや距離が必要だが、転がりが安定しやすい。 |
| 方向性 | フェース操作しやすく開閉しやすいが、芯ブレに弱いためミスヒットで曲がりやすい。 | 慣性モーメントが大きく芯ブレに強い。フェースの向きが安定し、引っかけ・押し出しが出にくい。 |
| 理由 | シャフト軸に近いためフェースが素直に動き、入力に対して即座に反応する。 | 重心が遠く慣性が大きいためヘッドがねじれにくく、オフセンター時のバラツキが少ない。 |
低重心と高重心の特徴
前項のように、上下方向の重心高さでも違いが生まれます。低重心のパターは、打点が重心より上になりやすく、イントラクト直後から順回転しやすい傾向があります。したがって、転がり出しが速く距離感がつかみやすい一方で、上下の打点ズレには敏感です。
一方、高重心のパターは重心がソールから高いため、打点が重心に近づくほどエネルギー伝達が安定し飛距離が安定しやすくなります。ただし、高重心ゆえに打点が重心より低いと順回転が遅れてバウンドしやすくなるので、ロフト角を適切に調整する必要があります。
左右方向(ヒール・トウ方向)は慣性モーメントに直結します。ヘッド内に重量が集中して慣性モーメントが低い場合、芯を外すとフェースが大きくねじれて曲がる傾向があります。逆に慣性モーメントが高いパター(ヒール・トウに重量配分している場合)はオフセンター時の初速や回転が安定し、距離感のブレが少なくなります。
フェースバランス型パターとトウハング型パターの違い
「フェースバランス型」と「トウハング型」は、重心距離の違いによる代表的なパターの分類です。フェースバランス型パターは重心距離が短く、自然にフェースが水平を向くためストレートストロークと相性がよいのが特徴です。一方、トウハング型は重心距離が長く、つま先側が下がる形状でフェースを自然に開閉しやすいため、アークストロークのゴルファー向きです。以下に両者の主な違いをまとめます。
フェースバランス型の特徴
フェースバランス型パターは、フェースがストローク中に開閉しにくいため、ストレートなストロークをする人に適しています。フェースが常に目標方向に向きやすく、インパクトでフェースが戻りやすいので直進性が高い打球が得られます。打感はヘッド全体が水平に動く感覚で軽快なテンポになりやすく、ミスヒットにも比較的強くなります。
トウハング型の特徴
トウハング型パターは、重心距離が長くトウ側が下がっているため、ストロークの中でフェースが開閉しやすい構造です。そのため、パターを自然にリリースでき、アークを描くストロークを好む人に向いています。打感はヘッドの重みを感じやすく、押し込むようなしっかりとしたフィーリングになります。フェースが自然に閉じていく特性から、引っかけを抑制しやすい場合もあります。
それぞれの向き不向き
フェースバランス型は直線的なストロークで素直な転がりを求めるゴルファーにおすすめです。トウハング型はアーク型ストロークでフェースワークを使いたいゴルファーに適しています。以下に両者の違いを比較表にまとめました。
| 種類 | フェースバランス型 | トウハング型 |
|---|---|---|
| ストローク適性 | ストレート系、ややアーク | 強いアーク(大きめの円弧) |
| 方向性 | インパクトでフェースが戻りやすく直進性が高い | リリース時にフェースが自然にスクエアになりやすい |
| 打感・タイミング | ヘッドが軽快に動く感覚。テンポが取りやすい。 | ヘッドの重みを感じやすく、押し込みやすいリズム。 |
ストロークタイプに合ったパター重心の選び方

自分のストロークタイプやパットにおける弱点を把握し、それに合った重心特性のパターを選ぶことがスコアアップのポイントです。以下のようにストローク傾向別やミス傾向別に選び方の目安があります。
直線ストロークに合う重心
ストレートバックスイングでフェースを開閉しにくいストロークの人は、重心距離が短いフェースバランス型パターが合います。フェースが中央を向いたまま動きやすく、狙った方向に直進性よく打ち出せるためです。特に左右方向のミスが少ないゴルファーはフェースバランスを試してみるとよいでしょう。
アークストロークに合う重心
円弧を描くアークストロークの人には、トウハング型パターが適しています。重心距離が長いのでヘッドがリリースしやすく、アークの中でフェースが自然に返りやすい構造です。インサイド–アウトやアウト–インのストロークでフェースワークを生かしたいゴルファーは、トウハング型パターでスイートスポットを有効に使えます。
距離感や方向性の弱点から選ぶ
次に、パッティングで頻出する弱点ごとのおすすめポイントです:
- 引っかけ(左へのミス)が多い:フェース回転が速い傾向があるので、深い重心やフェースバランス型でフェースの開閉を抑制する。
- プッシュ(右へのミス)が多い:フェースが戻りにくい傾向なので、浅めの重心やトウハング型でフェースを返しやすくする。
- 距離感が安定しない:重心深度や高さを調整して打球の初速と転がりを安定させるタイプを試す(深重心+低重心など)。
上記以外にも、プレッシャー下で手が硬くなる場合は深・低重心のパター、短いパットが苦手な場合はフェースバランスよりトウハング、など自分の傾向に応じて選ぶと効果的です。
最新パターの重心設計と技術動向
2025年現在、パターメーカーは重心配置の工夫にますます注力しています。特にヘッド内に可変式ウェイトを搭載し、重心位置を微調整できるモデルが普及しています。例えば、可変ウェイトを前後あるいは左右に動かせる機構により、プレーヤーは自身のスイング傾向やグリーンコンディションに合わせて重心を最適化できます。
また、マレット形状のパターでは高慣性モーメント(MOI)を実現するために、ヒール側やトウ側に重量を配分して深い重心と高慣性化を図る設計が主流です。これに対し、ブレード形状のパターは個性的な打感と微調整のしやすさを活かすため、浅めの重心で軽快なフィーリングに重点を置いています。自分のレベルや好みに応じて、マレットとブレードの設計コンセプトも比較してみましょう。
近年の新製品では、CADやAIを利用した重心設計も進んでいます。精密なシミュレーションを用いてフェースの打点振り分けや素材配置を最適化し、ボール始動時の力の伝達効率を高めるモデルが登場しています。さらに、シャフトのロフト角度やライ角との連携を考慮し、狙った重心位置の効果を最大化する設計が増えてきています。
実際に人気の新モデルでは、パターヘッドの内部にウェイトを複数埋め込んで重心高や重心深度を調整できるものや、打音や打感を重視した特殊インサートを組み合わせながら理想の転がりを追求するものなどがあります。今後も各ブランドの最新技術に注目し、自分に合った重心特性を見つけてください。
まとめ
パターの重心位置は、同じストロークでもボールの転がりや方向性に大きな違いを生む重要な要素です。重心距離・深度・高さの各要素を理解し、自分のストローク傾向やミスの傾向に合ったパターを選ぶことで、距離感と方向性の精度が向上します。
フェースバランス型とトウハング型では適性ストロークが異なり、初心者は深め・高め慣性のパター、上級者は浅め重心のパターを好む傾向があります。最新のパターでは可変ウェイトやAI設計が導入され、プレーヤーのニーズに合わせて重心調整が可能となっています。
パター選びでは、必ず試打を行い、自分にしっくりくる打感や転がりを感じてください。重心の特徴を知り、適切なバランスのモデルを使いこなすことが、安定したパッティングとスコアアップへの近道です。